TAO建築設計


01金属造形

金属工芸作家 大利誠司さん

金属工芸作家 大利誠司さん

札幌教育大学特設美術科で金属工芸を専攻。ステンレスのオブジェなどを制作する会社に就職後、独立した。自治体、企業、工芸作家、建築家などの全国からの制作依頼に応えている。札幌市盤渓に工房を兼ねた「L.i.b gallery」(リブギャラリー)を開設。自身の作品の他、道内作家の木工品や陶芸作品を展示販売している。音楽、映像関連など興味の幅が広く「人生にムダなことは何もない」と語る。

【Lib gallery】札幌市中央区盤渓435
Tel.011-622-4392

大変そう、と思われてしまったら負け。最初からそこにあったかのようなモノづくりをめざす。

大利さんが手がけた手すり

大利さんは、公共施設の大型モニュメントから個人向けのインテリアまで手がける金属工芸作家。川村との出会いから、すでに10年以上が過ぎた。
「鉄を鉄らしく」使うというTAO流こだわりを支え、カタチにしてくれる頼もしい仲間の一人だ。

「川村さんは、まじめで厳しい人。おもしろい仕事がしたいと願っている私を、常に新鮮に刺激してくれます」と、大利さんは笑う。「知り合って2~3年後から、川村さんのモノづくりへのこだわりがさらに深まり、正直言うと一般住宅で成立するのか?と感じたほどです」

例えば、手すり。鍛鉄で美しい曲線と手ざわり感を実現するまでに、どれほどの試行錯誤を繰り返したかわからないほどと言う。さらに、「接合部分を見せずにシンプルにおさめたいと言われたときには、さすがに驚きました」

川村のオーダーは、建築施工の域を超え、クラフトづくりの領域だと感じた。「最初は随分口論もしましたが、川村さんは胸に描いたこだわりは必ずやりきる人なのだとわかり、私も何としても応えようと思いました」

川村の思いをカタチにするため、ひたすら鉄を叩く。繊細な質感を描き出すためには、機械に頼ることはできない。ハンマーヘッドの重さと振りおろし方で微妙に表情を変える。10cmを仕上げるのに、約100回は叩く。5mの手すりならば、5,000回だ。体力はもちろん根気が求められる作業がつづく。

階段への取り付けにも必ず立ち会い、収まり具合を見極めて調整する。「施主さんには見た目の美しさ、手作りのあたたかさを十分に感じてもらえればそれでいい」と語る。

「大変だったでしょう」と思われてしまったら、負け。あたかも最初からそこにあったかのようになじんでいなければならない、というのが大利さんのモノづくりへの姿勢だ。この根っこでつながっている、TAOの建築設計。完成したときの充実感を共有しながら、使いごこちと芸術性を融合させるためのさらなる「スタンダード」づくりへ向かっている。

廃材を利用しながらコツコツと創り上げたギャラリー&工房
廃材を利用しながらコツコツと創り上げたギャラリー&工房。
用途に合わせて使い分けるハンマー類
用途に合わせて使い分けるハンマー類。ヘッドの重さは約1.5kg。ヘッドのカタチもカスタマイズし、使いごこちを追求。
鉄の塊をハンマーで根気強く叩きつづけながら、仕上げていく
鉄の塊をハンマーで根気強く叩きつづけながら、仕上げていく。1打ごとに表情の味わいが深まる。
納期が近づくと、深夜まで作業することも
納期が近づくと、深夜まで作業することも。「金属はおもしろい」と、ぞっこんほれこんでいる。
絶妙な叩き具合で仕上がった鍛鉄
絶妙な叩き具合で仕上がった鍛鉄。これを更にオイル塗りの上、バーナーであぶり、ワックスがけをして完成する。
工房で仕上げた手すりは、必ず現場で最後の調整をする
工房で仕上げた手すりは、必ず現場で最後の調整をする。特に、余計なものが一切見えないよう取り付けるには、高い技術力が必要。

TAO MESSAGE

TAO MESSAGE

施主に、大利さんが創った鍛鉄の手すりサンプルを見せると、迷うことなく大利さん作品を気に入る。手にふれたときのあたたかさが、一瞬にして人の心に届くのだろうと感じている。
私からは、大利さんにかなり難儀な相談を持ちかけることが多い。徹底的に議論し、調整しながら進め、完成したときの喜びは言葉を超えるほど大きい。大利さんとその思いを共有できるのは実に幸せで、次へ向かうパワーになる。
私の空間づくりは、このように美意識の高い職人作家さんに支えられている。いわば「めんどう」な仕事に取り組み、ジャンルを超えたモノづくりのおもしろさ、可能性を教えてもらえる大利さんに、ひたすら感謝である。

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